「地理的表示保護(GI)制度」の登録は、まず、農林水産物・食品の生産業者などから構成される団体が、産品の名称を生産地や品質などの基準とともに、農林水産大臣に申請することから始まります。農林水産省による厳正な審査の結果、所定の登録要件を満たした産品が「地理的表示(GI)」として登録されます。
保護対象となった産品の名称には、その登録の証として「GIマーク」を使うことが認められます。この「GIマーク」が付されていることで、他の産品との差別化を図ることができるというわけです。
なお、GI登録されていない、または基準を満たしていない産品にこのマークを使用することはできません。不正な名称やマークの使用が判明した場合には、法律の規定に基づき、罰則が科されます。ちなみに、「GI」とは、「Geographical(地理的)Indication(表示)」の頭文字からとられています。
日本の地理的表示法に基づいて登録された産品には、地理的表示と併せてGIマークを表示することができます。つまり、GIマークは本物の証、と言えます。
なお2022(令和4)年11月から、GI産品を原材料とする製品にも、一定のルールを満たすことにより、GIマークを表示することができるようになりました。
出展対象品目 :
青果、生鮮農産食品、水産食品、冷凍調理食品、肉類及び乳製品、有機食品、ベジタリアンフード、調味料及び食品添加物、乾燥食品、アルコール類、コーヒー、お茶、飲料、飴、クッキー、健康食品、お菓子、氷菓及び関連サービスなど
地理的表示(GI:Geographical Indication)とは、その地域ならではの特性を持つ産品の名称のことです(注1)。
例えば、市田柿、神戸ビーフ、越前がに、が挙げられます。
その商品が生産された地域のみを示す「原産地表示」とは異なります。
下の図に示すように、その産品に独特の魅力や社会的評価などの特性があり、しかもその産品の特性が、地域で長年培われてきた特別な生産方法や、気候・土壌、伝統・文化などの地域の特徴から生みだされている、そんな特別な産品の名称が「地理的表示」なのです。
注1:農林水産省webページ「地理的表⽰(GI)保護制度」では、地理的表示について「その地域ならではの⾃然的、⼈⽂的、社会的な要因・環境の中で⻑年育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称」と説明しています。
生産者は、その地域ならではの特性を持つ産品を販売する際に地理的表示を使うことにより、その産品の価値を消費者に伝えることができます。消費者は地理的表示をみて、例えば「この商品は、あの地域の気候を活かして栽培されているので、格別に香りがよくおいしい」「この商品は、あの地域の伝統的な方法で製造されるので、特別な風味がある」と期待して購入することになります。
しかしもし、本来の産品とは異なる生産地・生産方法の商品や、本来の特性をもたない商品にまで、同じ名称が使われ販売されたとしたら、消費者は期待を裏切られてしまいます。本来の地域の生産者たちにとっても大きな損失です。
そこで、地理的表示(GI)を、生産地・特性・生産方法等の基準とともに登録し、保護するのが地理的表示(GI)保護制度です。登録された地理的表示を使用できるのは登録した基準を満たす商品だけなので、消費者は信頼して商品を選択することができます。
制度制定の背景
「地理的表示(GI)保護制度」が制定された背景には、「生産者の利益の保護」、そして「需要者の利益の保護」という二つの目的があります。いくら生産者の方々が多くの時間と労力をかけて高品質な産品を生産しても、それが市場においてきちんと評価され、その価値が認められなければ適切な利益を得ることができません。また、そのような地域ブランドの名称について他人の模倣を許してしまうと、それまで費やしてきたコストだけでなく、本来生産者の方々が得られるはずであった利益も横取り(フリーライド)されてしまう可能性があります。
このような事態を防ぐため、一定の要件を満たした地域ブランド産品を国が適正に評価するとともに、仮に他人が模倣した場合には国が取り締まる制度の構築が急務となっていました。また、このような制度の存在は、生産者の方々だけでなく、需要者(消費者)の皆さんの保護にもつながります。すなわち、GIとして登録されるためには、特徴のある産品というだけでなく、その品質管理体制が整備されていることも要件となります。
GI登録された産品は国によって模倣品が排除されることになりますので、需要者(消費者)の方々は、品質の良い、本物の産品を選ぶことができるといえます。このような経緯から、2015年(平成27年)6月、「地理的表示(GI)保護制度」がスタートしました。ちなみに、海外のGIとしては、フランス・シャンパーニュ地方で生産される発泡性ワインの「シャンパン」が有名ですね。
他にも、フランス・ノルマンディー地方の「カマンベール・ド・ノルマンディー」やイギリス・スコットランド西海岸で養殖された鮭「スコティッシュ・ファームド・サーモン」、イタリア・パルマ地方の生ハム「プロシュット・ディ・パルマ(パルマハム)」などが知られています。
「地理的表示(GI)」は海外でも導入されている制度です
「地理的表示(GI)」は、地域ブランド保護の枠組として国際的に広く認知されており、世界100か国を超える国と地域で保護されています。WTO(世界貿易機関)の「TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)」においても、知的財産のひとつとして位置付けられています。また、本年(2019年)2月に発効した日本とEUの経済連携協定(日EU EPA)では、関税の撤廃だけでなく、GIを相互に保護する仕組みが整備されており、これにより日本の48産品、EU側の71産品についても、自国のGIと同様に保護を行うこととなりました。
日本では、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(略称:地理的表示法。2014(平成26)年6月に成立、翌年6月より施行)により、農林水産物・食品等の地理的表示が登録されています。仮に登録された基準を満たさない商品に地理的表示が使用されている場合には、⾏政が不正として取り締まり、登録された地理的表示を保護します。
参考:農林水産省webサイト「地理的表示(GI)保護制度」の「地理的表示法とは」
なお酒類のGI保護制度は、酒税法に基づく告示(2015年(平成27年)10月30日国税庁告示第19号)によって運営されています。
地理的表示(GI)保護制度は、もともとフランスやイタリアなど欧州で生まれた制度です。欧州では、チーズ、ハム、ワインなどさまざまな産品で多数の地理的表示が登録され、保護されています。パルミジャーノ・レジャーノやシャンパンも地理的表示です。
現在100か国を超える国でこのGI保護制度が導入されています。
制度は通常、国ごと(EUの場合はEU全体で1つの制度)に設けられます。その一方で、魅力的な産品は世界に流通するので、各国の制度の枠を超えて地理的表示を保護する仕組みが必要です。
そこで、国どうしが協定を結び、相手国が登録している地理的表示を自国内で保護するかわりに、自国が登録している地理的表示を相手国内で保護してもらう仕組み(相互保護)が整えられつつあります。例えば日本とEUは日EU経済連携協定を締結しています(2019年2月発効)が、この中には、指定された地理的表示の相互保護が盛り込まれています。
近江牛
【地域との結びつき】
滋賀県内でもっとも長く飼育された黒毛和種であり、滋賀の豊かな自然に囲まれながら琵琶湖の水を飲んで育ちます。牛肉食が禁じられていた江戸時代、将軍家への献上のため、唯一、牛肉の生産が許されていたのが彦根藩でした。
大正時代から肥育振興策が実施され、昭和26年には日本初のブランド牛肉振興団体「近江肉牛協会」が設立されるなど、古くから和牛生産に取り組んでいるのがこの地域であり、「近江牛」は「日本最古のブランド牛」とも言われます。
【産品の特性】
「日本三大和牛」のひとつとされます。融点が低い不飽和脂肪酸であるオレイン酸を多く含み、脂質の口溶けが良いのが特長。特有の香りと柔らかさも高い評価を獲得しています。
ステーキやすき焼き、しゃぶしゃぶなどさまざまな料理にマッチし、プロの料理人たちからの人気も高いブランド牛です。
紀州金山寺味噌
【地域との結びつき】
鎌倉時代に中国の径山寺(きんざんじ)から、宋での修行から帰国した僧によって和歌山県に持ち帰られた味噌の製法を起源とする説が有力であり、和歌山県が金山寺味噌発祥の地とされています。民衆の保存食として広まり、江戸時代にも紀州名物として販売されていました。1948年頃に現在の製法が確立。その後は和歌山県内で継続して生産されています。その後、1951年には県内の味噌生産者らにより、「紀州味噌工業協同組合」が設立され、「紀州金山寺味噌」の名称を使用するための規定を策定しブランドの保護が図られています。
【産品の特性】
和歌山県内で伝統製法により生産されている、“そのまま食べる味噌”。
野菜を麹と一緒に仕込み、発酵・熟成させているため、麹と野菜の味とが溶け合い、味がまろやかで、粒が残った状態でも柔らかな食感を持つ保存食です。
また、「紀州金山寺味噌」は麹原料として大豆、裸麦、米の3種類すべてを使用し、具材として瓜、茄子、生姜、紫蘇のすべてを用いてつくられますが、他地域の金山寺味噌は米を使わない、紫蘇を使わないといった違いがあります。
越前がに
【地域との結びつき】
能登半島より西側の日本海には、ズワイガニの生息域が広がり、我が国の主要な漁場となっています。中でも、越前海岸沖は、急深な地形によって沿岸から近距離に好漁場が形成されているため、福井県は古くからズワイガニの産地として知られています。
福井県内の「目利きの力」のある経験豊富な流通業者にも満足できる品質のカニを安定して水揚げできるように、漁船での選別作業や鮮度維持のための冷温保管が徹底されています。
【産品の特性】
底引き網漁船により福井県内で水揚げされたズワイガニで、そのほとんどが生きた状態のまま水揚げされるため、なんと言っても鮮度が良いのです。威風堂々とした雄がにの脚の肉は、刺身にすると肉の繊維が繊細にとろけるような食感と甘みの強さが感じられ、ゆでると食感はふっくらとし、甘みを伴ったカニの旨味を味わうことができます。鮮度低下が早いカニミソ(肝膵臓)や、「赤いダイヤ」とも呼ばれ珍重される雌がに(せいこがに)の内子(卵巣)も濃厚な旨味を持ったものになります。
福井県により90年以上にわたり皇室に特産品として献上され、同県を代表する水産物として全国的に高い知名度を有し、重量当たりの単価は全国平均を上回っています。